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全身性エリテマトーデス

全身性エリテマトーデス(SLE)とは

全身性エリテマトーデスは、自己免疫疾患です。
関節、腎臓、神経、粘膜、皮膚、血管の壁など臓器障害や様々な症状が現れます。
英語ではsystemic lupus erythematosusといい、その頭文字をとって「SLE」と呼ばれることもあります。

私たちの体は「免疫」という働きによって、細菌やウイルスなどの外敵を攻撃して自分の体を守ります。
しかしこの疾患では、免疫の働きに何らかの異常が起こり、自分自身の身体の細胞や組織を攻撃してしまうのです。

根本的な治療法はまだ確立されていません。
そのため、国から医療費助成を受けられる指定難病として認められています。

しかし早期の診断と適切な症状のコントロールによって、日々自分らしい生活を送っている患者さんも多くいます。

全身性エリテマトーデスの患者さんは国内に6万人以上、女性に多い

2019年時点で全身性エリテマトーデス(SLE)として難病の申請をしていた患者さんは、約6万人でした。
しかし申請していない患者さんや受診していない人などもいることを想定すると、国内には約6〜10万人の患者さんがいるのではないかと考えられています。

患者さんの男女比は全体で見るとほぼ1:9で、女性に多い病気です。
なかでも生理が始まってから終わるまでの20〜40歳の女性が7〜9割を占めます。
新生児や高齢の方も発症しますが、子供・高齢者の患者さんだけを見た場合は、男女の差はあまりありません。

この病気は世界各地でみられます。
しかし白色人種での発症は比較的少なく、アフリカ系やアジア系の有色人種に多いという統計があります。

医療費助成などの公的支援制度が使えます

根本的な治療法がまだ確立されていない全身性エリテマトーデス(SLE)は、治療が長期化しやすい傾向があります。
そのため、国や地方自治体から医療助成制度が適用される場合があります。

適用される可能性がある医療助成制度は、以下の2つです。
どちらも自ら申請しなければ助成を受けることができない点に注意してください。
各地方自治体に問い合わせましょう。

・特定難病医療給付制度
・高額療養費制度(高額医療費制度)

特定難病医療給付制度

難病法に基づいた医療費助成制度です。
所得・病状によって負担する上限月額が決定されるもので、上限月額以上の医療費・介護費用を支払う場合に助成を受けられます。
有効期間は、原則として1年以内です。
引き続き支給を受ける場合は、有効期間内に更新申請の手続きが必要です。

申請は、書類を一式揃えて各都道府県の窓口に申請します。
審査を待っている間に支払った医療費・介護費用分も、後から払い戻し請求することができます。
対象となるのは以下に該当する患者さんです。

・全身性エリテマトーデスなどの指定難病と診断された
・重症度分類等の病状程度が一定程度以上(SLEDAIスコア4点以上)と診断された

重症度分類等に該当しない(軽症者)と診断された患者さんでも、継続的な高額医療や介護が必要になった場合は医療助成を受けることができます。

※継続的な高額医療=支給認定申請月以前の12ヶ月以内に医療費総額が33,330円を超える月が3回以上ある場合、または保険が3割負担の患者さんで医療費の自己負担額が1万円以上になる月が1年に3回以上ある場合(入院中の食事代は除く)

高額療養費制度(高額医療費制度)

患者さんの年齢や世帯の所得によって医療費の上限額が決定され、助成を受けられる制度です。
医療機関・薬局で支払った自己負担の医療費が1ヶ月の上限額を超えた場合、超えた分の金額が支給されます。

高額療養費の申請は「事前手続き(限度額適用認定証)」と「事後手続き(高額療養費の支給)」の2種類があります。

「事前手続き(限度額適用認定証)」では、事前に「限度額適用認定証」を申請します。
交付後は、医療機関の窓口で認定証を提示します。
そうすることで、自己負担限度額までの自己負担額に抑えることができます。

「事後手続き(高額療養費の支給)」では、医療機関・薬局の窓口で一旦支払います。
後日、自己負担額の上限を超えた金額分を払い戻してもらう方法です。

全身性エリテマトーデス(SLE)の原因

全身性エリテマトーデス(SLE)の原因は今のところわかっていません。

しかし一卵性双生児が全身性エリテマトーデス(SLE)を二人揃って発症する確率は25%以上というデータがあります。
そのため、何らかの遺伝的素因に加えて、環境的な要因、免疫システムの異常、性ホルモンなどが複雑に関係して発症する、と推測されています。

環境的な要因

日光(紫外線)を長時間浴びることは、SLE発症のきっかけのひとつだと考えられています。
そのほか、感染症、妊娠・出産、特定の医薬品の使用、怪我・手術なども要因になる可能性がある、とされています。

免疫システムの異常

私たちの身体の免疫は、細菌やウイルスなどから私たちの体を守っています。

異物(抗原)が体内に侵入すると、「抗体」をつくって攻撃・排除しようとします。
抗体は抗原とくっついて、さらに攻撃を補助する「補体」が結合した「免疫複合体」になります。

ところが、全身性エリテマトーデス(SLE)の患者さんの身体では免疫システムに異常が起きてしまいます。
最も多いのは、異物(抗原)の代わりに、細胞の中の核と反応する「抗核抗体(自己抗体)」が作られてしまうケースです。
抗核抗体(自己抗体)は、自分の身体にある成分とくっついて免疫複合体をつくり、自分自身の体を攻撃・排除しようとする免疫複合体がつくられてしまうのです。

全身性エリテマトーデス(SLE)では、この自分の身体を攻撃してしまう免疫複合体が体内で増殖します。
そして皮膚や臓器などに沈着して、炎症や臓器障害などを引き起こします。

性ホルモンの影響

SLEの患者さんの約9割は20〜40歳代の女性です。
妊娠可能な年齢の女性に多く発症するため、女性ホルモンが全身性エリテマトーデス(SLE)の発症に関与しているのではないか、と考えられています。

全身性エリテマトーデス(SLE)の日常生活での注意点

全身性エリテマトーデス(SLE)は慢性の病気です。
症状が良くなってもしばらくすると悪化してしまうこともあるため、定期受診や薬の服用はとても大切です。
日常生活での自己管理も重要になります。

紫外線対策

全身性エリテマトーデス(SLE)の皮膚症状は、紫外線がひとつの要因だと考えられています。
症状や季節に関係なく、毎日紫外線対策を行うことが推奨されます。

曇りや雨の日、冬の季節でも、紫外線は室内まで届きます。
日焼け止めを塗る、蒸れない素材の長めの丈の服を着用するなど、なるべく紫外線に当たらないよう工夫します。

体力的に無理のない仕事を選ぶ

全身性エリテマトーデス(SLE)の患者さんは、さまざまな職種で活躍しています。
持病のない方と同様の業務も可能です。
就職活動も持病のない人とあまり変わりません。

雇用形態、勤務時間・体制などは、負担の少ない就職先を選択することが大切です。
実際に患者さんは、体力的に無理のない一般事務などのデスクワーク、自分のペースで進められる専門職などに就労する人が多い傾向にあります。

全身性エリテマトーデス(SLE)であることを必ずしも職場でオープンにする必要はありません。
しかし体調を崩してしまったときのために、また仕事を長く続けていくためにも、上司や親しい同僚に理解してもらうことも大切です。

仕事・家事・育児などのストレスや過労を避ける

仕事はなかなか手を抜けないものです。
しかし家事や育児も完璧にこなそうとしてしまうと、身体的・精神的に大きな負担になります。
ストレスや過労は、全身性エリテマトーデス(SLE)を悪化させることにもつながります。
家族や周囲の人たちの協力を得たり、便利なサービスを利用するなど工夫しましょう。

例えば食器洗いは食洗機、洗濯機は乾燥機付きにする、スーパーの宅配サービスを依頼する、週に何回かは保育園・ベビーシッターを利用するなど、現在の負担を減らすことができるかもしれません。

外出先でもこまめな休憩をとる

全身性エリテマトーデス(SLE)の症状には、倦怠感や関節痛などがあります。
そのため、長時間の歩行や立っていること自体が難しい場合もあります。
外出先でもこまめに休憩をとりましょう。

公共交通機関を利用するときは「ヘルプマーク」を身につけるのも手です。
疾患があることを知らせることで周囲の人も気付き、席を譲るなどしやすくなります。

妊娠を希望する場合は計画的な準備を

全身性エリテマトーデス(SLE)の患者さんの妊娠しやすさは、持病のない方と変わりません。

しかし妊娠・出産による症状の再燃や、妊娠合併症の発症が懸念されます。
また薬剤の服用が胎児に影響を及ぼす場合があります。
そのため妊娠を希望する場合には、事前に検査を行う、投薬の変更など、主治医との計画的な準備が必要になります。

全身性エリテマトーデス(SLE)のケア方法

家事を率先して手伝いましょう

全身性エリテマトーデス(SLE)は、関節痛や、倦怠感などの症状があらわれます。無理をすることでストレスを感じ、症状を悪化させる可能性があります。
患者の症状が辛い時には、無理をさせない環境を家族が作ることが肝心です。家族も日ごろから率先して家事を行うなどのサポートを心がけましょう。

精神的・身体的ケアを行いましょう

日常的に感じる精神的ストレスなども症状を悪化させる可能性があると言われています。
全身性エリテマトーデス(SLE)の症状により、全身の倦怠感や疲労感、発熱などもあるため、外出する際はこまめに休憩を促すなど、家族も患者の様子をしっかり把握しましょう。
また、脱毛したり、うつ状態などの精神症状等も症状としてあらわれる場合もあります。
特に女性の患者の場合は、脱毛症状については辛く感じる方も多いため、家族が精神的にケアできるように患者の心の声を聞きましょう。

過ごしやすい生活空間になるよう環境を整えましょう

光線過敏症といって、紫外線等で症状が悪化する患者も多くいます。室内でも、紫外線カットができるカーテンを使用する、窓に紫外線をカットするシールを貼るなどし、家庭内でも積極的に紫外線カット対策を講じると良いですね。
また、寒冷刺激があると末端の血液の流れが悪くなるため、居住空間の温度についても患者が心地よい、症状が落ち着くような適温を心がけましょう。

全身性エリテマトーデス(SLE)に介護保険は使える?

全身性エリテマトーデス(SLE)は64歳以下の患者の場合は、指定難病ではありますが、厚生労働大臣が定める疾病等にはあたらないため、居宅介護などのサービスが必要でも介護保険のサービスは受けられません。しかし64歳以下の方でも、日常生活を送る中でサポートが必要な場合があるでしょう。

その場合は、介護保険外サービス等の訪問介護の利用も視野にいれてみるとよいでしょう

訪問介護サービスで何ができるの?

全身性エリテマトーデス(SLE)を発症していても64歳以下の場合は介護保険が原則使用できませんが、介護サービスを利用したい場合は自費で訪問介護などのサービスを受けられる場合があります。
訪問介護で利用できるサービスは主に、「身体介護サービス」と「生活援助サービス」があります。
施設によってそれぞれの介護サービスが利用できるかどうかは異なります。
介助サポートを希望する場合は、まずはお住まいの市区町村などで相談し、施設等にも問い合わせすることをおすすめします。

必要な時はプロによるサポートを利用しよう

全身性エリテマトーデス(SLE)の症状は、普段は特に介護やサポートが必要でないことも多いでしょう。しかし、症状が進行し身体が辛くなり身体的介助が必要な場合や、症状がキツく出て日常生活を送るのが辛い時などは無理をせず、プロによるサポートも検討しましょう。
病気になっても毎日を自分らしくいきいきと過ごせるよう、自分だけで抱え込まずに家族や友人等に相談したり、サポートをお願いしたり、時にはプロによるサポートも利用してみてくださいね。

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